反転はんてん攻勢こうせい 想定そうていより進すすまず

占領せんりょうされた領土りょうどの奪還だっかんを目指めざし、ウクライナの反転はんてん攻勢こうせいが始はじまったのは去年きょねん6月つき。

東部とうぶドネツク州しゅうのバフムト周辺しゅうへん、ドネツク州しゅう西部せいぶ、南部なんぶザポリージャ州しゅうの西部せいぶの主おもに3つの地域ちいきで進軍しんぐんを開始かいししました。

当初とうしょからドイツ製せいの戦車せんしゃレオパルト2など、欧米おうべいから供与きょうよされた戦車せんしゃや歩兵ほへい戦闘せんとう車しゃが投入とうにゅうされました。

しかし、ロシア軍ぐんが支配しはい地域ちいきに地雷じらい原はらやざんごうなどを組み合くみあわせた強固きょうこな防衛ぼうえい線せんを幾重いくえにも築きずいたことなどで戦闘せんとうはこう着こうちゃく状態じょうたいに陥おちいりました。

さらに砲弾ほうだんや兵力へいりょく不足ふそくなどを背景はいけいに、ウクライナ軍ぐんの反転はんてん攻勢こうせいは当初とうしょの想定そうていよりも進すすんでいないと指摘してきされています。

去年きょねん12月つきにはアメリカの有力ゆうりょく紙しワシントン・ポストが反転はんてん攻勢こうせいは失敗しっぱいしたとした上うえでその背景はいけいには最大さいだいの支援しえん国こくアメリカとウクライナで作戦さくせんの進め方すすめかたや開始かいし時期じきをめぐる意見いけんの相違そういなどがあると指摘してきしました。

具体ぐたい的てきには、アメリカ側がわは、南部なんぶザポリージャ州しゅうに集中しゅうちゅうさせた戦力せんりょくをアゾフ海うみに向むけて南下なんかさせてロシアの補給ほきゅう路ろを断たつよう主張しゅちょうしたのに対にたいし、ウクライナ側がわは3方面ほうめんでの作戦さくせんを主張しゅちょうしたとしています。

一方いっぽう、ロシアは侵攻しんこう開始かいし以降いこう、30万まん人にん余あまりの兵士へいしが死傷ししょうしたとも伝つたえられる中なか、兵士へいしの犠牲ぎせいをいとわない大だい規模きぼな攻勢こうせいを続つづけています。

ロシアへの越境えっきょう攻撃こうげきとみられる動うごきが目立めだつ

領土りょうどの奪還だっかんでは思おもうような成果せいかがみられていない反転はんてん攻勢こうせい。

一方いっぽうで、ロシア領内りょうないへの無人むじん機きによる越境えっきょう攻撃こうげきとみられる動うごきが目立めだっています。

ウクライナと国境こっきょうを接せっするロシア西部せいぶベルゴロド州しゅうやクルスク州しゅう、それにロシアが一方いっぽう的てきに併合へいごうしたウクライナ南部なんぶクリミアなどに無人むじん機き攻撃こうげきが相次あいつぎました。

ロシアはいずれもウクライナ側がわによる攻撃こうげきだと主張しゅちょうしています。

ゼレンスキー大統領だいとうりょうも「無人むじん機きの運用うんようの質しつを高たかめ、敵てきに先さきんじることがことしの課題かだいの1つだ」と述のべるなど、今後こんごも無人むじん機きによる攻撃こうげきの応酬おうしゅうが激化げきかすることも予想よそうされます。

ロシア 東部とうぶの拠点きょてんを掌握しょうあく

侵攻しんこうを続つづけるロシアは、去年きょねん5月つき、侵攻しんこう開始かいし当初とうしょから激はげしい戦闘せんとうが繰り広くりひろげられてきた東部とうぶドネツク州しゅうのバフムトについて「完全かんぜんに掌握しょうあくした」と発表はっぴょう。

広島ひろしまでG7サミットが開催かいさいされ、ゼレンスキー大統領だいとうりょうも参加さんかする中なかでのことでした。

さらに今月こんげつ、ロシア国防省こくぼうしょうは東部とうぶドネツク州しゅうの拠点きょてん、アウディーイウカを、ロシア軍ぐんが完全かんぜんに掌握しょうあくしたことを明あきらかにしました。

ロシア側がわは「ドネツク州しゅうの解放かいほうを進すすめるため攻撃こうげきを続つづける」としてドネツク州しゅう全域ぜんいきの掌握しょうあくをねらう方針ほうしんを改あらためて示しめしています。

ロシアのプーチン大統領だいとうりょうは、アウディーイウカの掌握しょうあくを「重要じゅうような戦果せんか」だと強調きょうちょうした上うえで、ウクライナ軍ぐんが去年きょねん、奪還だっかんしたとしていた南部なんぶヘルソン州しゅうのドニプロ川がわの東岸とうがん地域ちいきにある拠点きょてんクリンキの集落しゅうらくを再ふたたび掌握しょうあくしたと主張しゅちょうし、ウクライナ側がわの反転はんてん攻勢こうせいを撃退げきたいしていると強調きょうちょうしました。

ロシア側がわ 軍ぐん内部ないぶでも足並あしなみの乱みだれ指摘してき

ロシア側がわが「一枚岩いちまいいわ」でないことを示しめす事態じたいも起おきました。

去年きょねん6月つき、ロシアの民間みんかん軍事ぐんじ会社かいしゃワグネルの代表だいひょうプリゴジン氏しが国防省こくぼうしょうとの対立たいりつを深ふかめる中なかで武装ぶそう反乱はんらんを起おこしました。

ワグネルの部隊ぶたいは一時いちじ、ロシア南部なんぶから北上ほくじょうし、首都しゅとモスクワでは、対たいテロ作戦さくせんが宣言せんげんされ、軍ぐんの装甲そうこう車両しゃりょうなども投入とうにゅうして厳戒げんかい態勢たいせいを敷しくなど緊張きんちょうが高たかまりました。

プリゴジン氏しは、武装ぶそう反乱はんらんの2か月かげつ後ごの去年きょねん8月つき、乗のっていた自家用じかようジェット機じぇっときが墜落ついらくし死亡しぼう。

プーチン政権せいけん側がわは、ジェット機じぇっときの機内きないで手りゅう弾しゅりゅうだんが爆発ばくはつしたとしていますが、詳細しょうさいは明あきらかにしていません。

アメリカの有力ゆうりょく紙しウォール・ストリート・ジャーナルはプーチン大統領だいとうりょうの最さい側近そっきんであるパトルシェフ安全あんぜん保障ほしょう会議かいぎ書記しょきが指示しじした暗殺あんさつだったと報ほうじました。

また、プリゴジン氏しと関係かんけいが近ちかいとされ軍事ぐんじ侵攻しんこうでロシア軍ぐんの副ふく司令しれい官かんを務つとめたスロビキン氏しが、武装ぶそう反乱はんらんの計画けいかくを事前じぜんに把握はあくしていたとも伝つたえられ、軍ぐん内部ないぶでも足並あしなみの乱みだれが指摘してきされる事態じたいになりました。

ウクライナ 軍ぐん体制たいせい刷新さっしん

反転はんてん攻勢こうせいの失敗しっぱいが伝つたえられる中なか、ウクライナ軍ぐんでも大おおきな動うごきがありました。

ゼレンスキー大統領だいとうりょうは、今月こんげつロシア軍ぐんの侵攻しんこうを食い止くいとめてきたとされ、国民こくみんの間まで人気にんきが高たかかったザルジニー総そう司令しれい官かんを解任かいにん。

新あたらしい総そう司令しれい官かんに陸軍りくぐんのシルスキー司令しれい官かんを任命にんめいしました。

ゼレンスキー大統領だいとうりょうとザルジニー氏しの間までは戦況せんきょうの認識にんしきや動員どういんなどをめぐってあつれきが生しょうじているという指摘してきが出でていました。

新あらたに就任しゅうにんしたシルスキー総そう司令しれい官かんは、前線ぜんせんのニーズを踏ふまえた部隊ぶたいの行動こうどう計画けいかく作づくりや、迅速じんそくで合理ごうり的てきな補給ほきゅうなどを軍ぐんの重要じゅうよう課題かだいに挙あげていて、改革かいかくが戦況せんきょうの打開だかいにつながるかが注目ちゅうもくされています。

今後こんごの戦況せんきょうは

今後こんごの戦況せんきょうについて、アメリカのシンクタンク、CSIS＝戦略せんりゃく国際こくさい問題もんだい研究所けんきゅうじょは「ウクライナは去年きょねん握にぎっていた軍事ぐんじ的てきな主導しゅどう権けんを失うしなった」とした上うえで、ロシア側がわがこの春はるにも東部とうぶルハンシク州しゅうなどを中心ちゅうしんにハルキウ州しゅうやドネツク州しゅうの北部ほくぶに向むけて攻勢こうせいを強つよめるという見方みかたを示しめしています。

その上うえで、ウクライナが欧米おうべいの軍事ぐんじ支援しえんを継続けいぞく的てきに得えられるかや、無人むじん機きや航空こうくう戦力せんりょくに重点じゅうてんを置おいた戦略せんりゃくを成功せいこうに導みちびけるかがかぎになると指摘してきしています。